動物病院開業コラム　開業考 25

動物病院開業方法と手順・開業の準備
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動物病院工事費用の増減・建物の賞味期限
小動物病院開業　動物病院開業考　VOL25

建築工事費用増の理由（3）	2016年9月26日
建築工事費用の増減は株価の上下に似ていて雰囲気で決まると言っても過言では無いと感じています。現状の工事費用が高くなっているのではなく、現状建築業界は好景気で仕事が潤沢な状況であり今後も東京オリンピック辺りまでは現状の景気が持続すると感じている建築業者が多数であることにより、強気の見積もり金額提示が続いているのが実態であろうと思います。クライアント（建築主）にとっても設計事務所にとっても適正価格で建物をつくることが難しい時期に入っています。今までの常識の範疇として考えていた工事費用が15％前後は上がると見込んでおかなければなりませんし、当初提出される見積もり金額は想定する金額の20～30％程度は高いことも視野に入れておく必要があります。想定金額内に工事費用を納めるためには、工事費用の見積調整を進め、工事内容や設計内容、仕上げ材料の変更等を模索し、さらには工事期間の延長等も視野に入れておかなければ工事金額を下げることが難しい状況が今後数年は続いていくと思います。
	かねこ動物病院テナント正面外観

建築工事費用増の理由（2）	2016年9月25日
建築の工事費用は建築資材や人件費に左右されるよりもそれ以外の要因によって大きく上下する性質を持っています。各々の建築業者が感じている建築市場の市況感・景況感に敏感に反応する傾向が強いのです。建築業者の抱えている仕事量が手薄であれば仕事を受注する方向に見積もり金額は動きますから見積もり金額は適正価格に近くなり、仕事量が多ければ無理をして仕事を受注する必要はないので、建築業者が余裕を持って工事ができる金額を提示し見積もり金額は高くなります。地域が共有する建築市況について景気が上向き加減で現状も十分な仕事を抱えており、将来も仕事が継続可能状況と判断できれば、工事業者は取らなくても支障が出ない工事に対してはこの金額ならば工事を請け負ってもいいですという強気な見積もりを出します。工事業者の多くが仕事を十二分に抱えている状況では多くの建築業者が同じ思考・状況になりますから、工事見積もり費用が想定の2倍以上になることもあり得ることです。地域内で信頼が高く特定の継続的な仕事を持っている建築業者の場合は手堅く確実な工事を続けることで企業の存続を考えていますから、市中に仕事が大量にあるからと言って無理をして多くの工事を受注することは避ける傾向にあります。自分たちのキャパシティーを超えない範疇で仕事量を調整し堅実な工事を続ける方向を選定しますので、新規の顧客の仕事を受注する方向に触手は動きません。拡大路線を模索する建築業者も数年後まで仕事が見込める状況では現時点で採算ぎりぎりの見積もりを提示して工事を請け負うことは会社にとってマイナスと判断しますから強気の見積もり金額の提示を是とするでしょう。
	かねこ動物病院診察室

建築工事費用増の理由（1）	2016年9月24日
東北地方の太平洋側に甚大な被害を与えた地震と津波以来、建築工事費用の微増は続き、公共工事は2〜3倍、民間工事も2倍近い工事費用になっていると巷では囁かれています。囁きの発信元も費用増の根拠も定かではないのですが、東北の震災後に提出される工事見積もり費用は確かに震災前の2倍近い金額が計上されているのも実情です。工事費用が高くなっていると言われると建築資材不足による資材高騰や職人不足による人件費の高騰が工事費用を押し上げていると考えがちですが、実際は震災前と震災後の2016年を比較しても建築資材は10〜20%程度値上がりしているものもありますが、概ね10%程度増額程度が妥当な範疇です。人件費にしても鉄筋や鉄骨、コンクリート工事関連の人件費は2倍近く値上がりしているものの、その他の職種に関しては10～15%程度の増額程度です。総じて判断すると震災前から震災後の工事費用の増額は15%程度が妥当と思います。人件費に関しては現場で作業する職人達の話しを聞く限りでは震災前後で大幅な値上がりはしてないようで、人件費は少々上がった程度ですが仕事は継続的に続いており、重複する仕事の依頼を断ることも多いとのことです。震災前、木造建築で60〜65万円坪で作っていた建物は15％増で69〜75万円坪程度でできる範囲と想定されますから工事見積もり金額も許容範囲は20～25％増程度が妥当な範疇で80万円坪未満程度が第一回目の見積もり金額としては妥当な範疇です。にも関わらず木造建築の工事見積もりが100万円坪を超えるような金額で出てくるのは何故なのでしょうか？
	かねこ動物病院 OPE室とＸ線室

需要掘り起こしと建物賞味期限（2）	2016年9月22日
建物は生ものではありませんから消費期限はありませんがおそらく賞味期限はどの建物にもあり賞味期限の長い建物がいわゆる良い建物の範疇に入るものと思います。食品の賞味期限は開封しない状況を目安にしていますが、建物の賞味期限は建物の外部や内部の手入れを怠らず続けることで担保されると考えるとわかりやすいと思います。木造建物は25～30年が賞味期限です。賞味期限中に通常の手入れを怠らず建物を使い続けた場合は賞味期限が25～30年程度は美味しく生活できる＝安心して生活できる期間ということです。その期間を過ぎると味は少々落ちるけれども食べられる食品＝それ以上住み続けても大きな問題はないがさらに頻繁な手入れが必要であろうと言う意味合いです。建築物には賞味期限があり賞味期限内の手入れを怠ると賞味期限が短くなります。賞味期限が短くなると安全性能や快適な環境を維持しにくくなり生活に支障が出ます。動物病院建築における賞味期限切れは診療サービスの低下と、客足の減少に直結する可能性があります。建物の賞味期限を長く保つことと賞味期限が切れる前に対策を講じることは判断に迷うところですが、正しい判断を下せるものではありませんが、状況を鑑み過去を振り返り未来を鑑みながら良い方向を模索することでしか解決の糸口をつかめないものです。需要の掘り起しから建物の賞味期限の話に変わってしまいましたが、需要の掘り起こしと建物賞味期限は赤い糸で結ばれているような気がしています。

	かねこ動物病院待合ラウンジと受付

需要掘り起こしと建物賞味期限（1）	2016年9月22日
需要の掘り起こしなどという言葉を耳にしますが何処に需要が埋まっているのかがわからなければむやみやたらに掘り起こしたところで需要が出てくるわけではないでしょう。況や、需要が埋まっている場所がわかっているならば掘り起しなどせず夜中に一人で少しずつ掘り出せばよいことで、大声を出して需要がここにありますよと皆に知らせて大げさに掘り出さなくとも良いのではなかろうかと思います。需要の掘り起しとは世の中に滞留しているお金を気持ちよく爽快に使ってもらえる方法を考え実行せよと言うことであり、多少空気が読め比較的世間体を気にする日本人のまどろっこしい遠まわしの言い方に過ぎません。金を持っているならばこのように使えば持っているお金の価値以上のものを手に入れられると言う呪い（マジナイ）を信じさせる行為と需要の掘り起こしの間に大きな差は無いと思います。動物病院設計を主業務とするＡＣプランは動物病院設計監理を受注して生業を立てていますが、動物病院設計が無くなればＡＣプラン自体も消滅します。動物病院の新規開業や移転あるいは増改築工事が減少すればＡＣプランの設計も少なくなり長期の休暇が取れる状況となるのでしょうが、長期休業と引き換えに設計業務継続と日々の生活が間々ならなくなるのは目に見えて明らかです。建物には食料品のように消費期限や賞味期限は明記されていません。消費期限は生もの等の長く保存できない食品につけられているもので賞味期限は保存が比較的長く続くもので開封しない状態で美味しく食べられる期限が書かれているものと理解しています。
	かねこ動物病院 OPE室

岸根公園動物病院	2016年9月21日
横浜市神奈川区岸根公園近くに新規開業動物病院工事を着工しました。2017年の1月下旬には完成予定、2月には開業予定です。最寄り駅は横浜市営地下鉄ブルーラインの岸根公園駅です。岸根公園駅出口1を出ると南側に岸根公園が広がっています。岸根公園の園内遊歩道を南西方向に縦断し岸根公園を出た道路沿いに動物病院を工事中です。建物は大小2つのボックスを木製のデッキで繋いだシンプルな形態です。黒に近い濃いグレーの金属で建物を包み込んだ外壁に濃い茶と茶色の中間色の茶色程度の自然木を合わせた木造2階建ての上品で落ち着いた雰囲気の動物病院となる予定です。開業地は長く片倉動物病院が営業していた場所で動物病院には縁のある土地です。新しく開業する動物病院は近隣の岸根公園に因んで岸根公園動物病院と命名される予定です。地域の動物達のホームドクターとして末永く地域の方々に愛される動物病院となるよう、地域の方々に愛される建物になることを願って設計監理に勤しみたいと思います。
	岸根公園動物病院

設計事務所の生きる術	2016年9月20日
生き方いろいろな設計事務所なのですが、モノは言いようで、生き方いろいろなどというと余裕があり楽しく豊かな生き方をしており、幅広い選択肢があるかの如く受け止められる方が多いのであろうと思います。どのような世界にも共通するものと思うのですが、一見きらびやかに映る世界や華やかに聞こえる世界の実態は、青く美しく見える隣の芝生とほぼ似たようなもので隣の芝生の上に立つと自分の庭と同じような世界が往々にして広がっているものです。建築家と言えば、社会的な地位がありそうで、高尚な言動と多彩なデザインセンスを武器に、クオリティの高そうな仕事をしながら豊かな報酬を得て優雅な生活を営んでいるイメージを持つ方々もいるものと思います。想像通りの環境で想像通りの生活をしている御仁も広い世の中にはいるとは思いますが、多聞に漏れず多くの建築士や設計に携わるものは社会の下層の方で上を見上げながら生きているのが実情です。上を見ながら生きているうちはまだ健全ですが、上を見なくなると建築士と言う職能は機能不全に陥る因果な職業でもあります。向上心のある間は建築士としての職能を全うできる精神を維持できる可能性が高いのですが、向上心が薄れ出すと機能不全状態に近づいていきます。向上心を保ちつつ、遵法精神に則り、楽しく設計を続けられる環境を整えるためにやらなければならないことは今後も果てしなくありそうな気がしております。
	動物細胞治療センター病院設計監理：アークビジョン

東海道新幹線	2016年9月19日
関西での打ち合わせには東海道新幹線を利用します。新幹線に乗る時は概ね3人席の窓側か通路側に席を取りますが、車内で所用を片付けなければならない場合は人の出入りを気にしなくていい窓側の席を確保します。曇りや雨の日は気にならないのですが、晴れた日、なかんずく雲一つない紺碧の空に覆われている日は、小田原駅辺りでいつも後悔の念にかられます。しまった・・・富士山は二人席側だ・・・と。打ち合わせが終了し帰りの新幹線からは快晴の富士山を堪能すべく二人席側の窓側席に狙いを定め自動販売機で切符を買おうと試みるのですが、東海道新幹線利用者は玄人が多く富士山の在り処を心得ているのは当然で、二人席の窓側席は埋まっています。少々の逡巡の後、今日は急ぐ必要もないからと二人席窓側の席に空きがある後発の新幹線を探し切符を購入し、新大阪駅で“くるりのタコ焼き”を食しゆるりと新幹線に乗り込んで二人席窓側の席に腰掛け、新幹線の車窓に目を遣るうちに景色は動き始めます。名古屋駅辺りに差し掛ると陽が落ち始め浜松辺りに差し掛ると陽は沈み濃い夕暮れになっています。既に、富士山は濃紺の背景と一体化し深い紺色と化しているのみ・・・。二人席窓側からの富士山は、また次の機会に持ち越されて、次の機会も同様の事態を繰り返し続ける東海道新幹線の膝栗毛でした。
	動物細胞治療センター病院設計監理：アークビジョン

すべての案件が個別解	2016年9月16日
動物病院設計においてもその他の設計においてもおよそ設計依頼に対する設計の進め方はすべての案件が個別の要望や希望を有しており、抱える問題も解決しなければならない障害についてもすべて個別案件であるという前提です。したがって提案する平面案も過去に実現した設計案とは異なる平面図となりテナント動物病院であれば今までに無い待合ラウンジのイメージが出来上がり戸建て動物病院であれば今までに無い立面図や断面図となり、外観の形態も内部の形状も今までに無いものとなります。見たことも無いものをつくりたいと考えている訳ではなく、むしろクライアントの要望と希望と経済的な範疇を鑑みながら平面図を推敲し、提案した平面図に対してクライアントの了解を頂き、基本平面図に進む段階で要望や希望を加味しどのような平面になるのだろうかとワクワクしながら図面を描き進めている状況です。平面がおもむろに固まりつつある段階になると建物断面を構想し始めます。平面図と断面図が頭の中で同時進行で揺れ動きながら二つのピントが重なる状況になってくると立面の想定を始めます。待合空間や受付空間の最終目標を持ちながら平面の計画を進める訳ではなく、建物の形態や形状が当初から念頭にあって平面計画を進める訳でもありません。随分無責任に聞こえるかもしれませんが、平面から断面、断面から立面に至る設計の進め方は待合空間や建物形状は“こんな風になってしまいましたよ”的な感じです。しかしながら平面～断面～立面に至る過程は納得の行くまで何度も繰り返す作業です。いわゆる基本設計と言われる主な作業が平面～断面～立面の作業の繰り返しになります。
	北九州市の動物病院設計監理：アークビジョン

黒い外壁の動物病院	2016年9月15日
動物病院に黒い外壁を使うのは珍しいことです。病院という一般的なイメージと黒い色の間に隔たりがあると日本人は感じるからなのかもしれません。黒い色に対する日本人のイメージは生よりも死のほうに比重があるように感じます。建築をつくる上で黒い外壁は使い難い材料ではありません。黒い外壁の住宅、共同住宅、店舗、公共施設は数多く見掛けます。しかし、黒い外壁の病院や動物病院はあまりお目に掛からないのが現状でしょう。福岡県北九州市小倉のライト動物病院は黒い外壁ファサードの動物病院です。黒い外壁の動物病院が動物病院らしくないとは言い難く、むしろ通りに面して存在を発信するインパクトは強く、白い動物病院名とオレンジの犬のロゴマークが黒い外壁に浮かび上がり印象深いファサードになっています。慣習や常識とは守らないよりは守った方が、物事は無難に進んでいくものですが、あまり捕らわれすぎると何事も常識の範疇の中でこじんまりとまとまり、どこかで見たことがあるような既視感が付きまといます。挑戦するのは勇気が要りますが、挑戦する気持ちをなくしてしまうと面白さや感動やインパクトは薄れていきます。黒い外壁の動物病院も“アリ”ではなかろうかと思った次第です。
	北九州市の動物病院設計監理：アークビジョン

敷地の高低差	2016年9月13日
建物を建てる土地は平滑であるとは限りません。目に見えて段差があるものや傾斜があるものについては建物を計画する前に敷地測量と共に土地の高低測量を行い事前に高低差を確認した上で計画を進めます。目視状態で敷地の高低差がはっきりしない場合はある程度敷地が平滑であるとの想定で計画を遂行しますが、可能であるならば敷地測量図と共に敷地の高低測量もしておいた方が良かろうと思います。敷地の高低差は建物の平均地盤面の決定や地盤面から1階床高の決定に関わる重要事項です。特に動物病院の場合は1階床高と地盤面との高低差が無い方が入り易い建物です。1階床の高さと地盤面との高低差によって出入口前に階段やスロープが必要になり、出入に支障が生じると動物病院の運営にも関わってきます。土地はフラットに見えても微妙な高低差があります。土地選定の際には土地の微妙な高低差にも注意を払う必要があります。
	敷地の高低差

福岡　動物病院竣工写真	2016年9月12日
2016年9月7日、福岡県筑紫野市と小倉に開業動物病院の竣工写真撮影に行きました。午前中に筑紫野市の新規開業テナント動物病院撮影を行い、11時過ぎの鹿児島本線、原田駅発小倉行きの電車に乗り込んで、博多駅で大分行きスーパーソニックに乗り換え、車内で昼食を取り、13時前に小倉駅到着、タクシーで動物病院へ移動し13時より倉庫改修の移転動物病院を撮影しました。当日の天候は曇り時々雨、不安定な天候で時折雲の切れ間から薄日が差し込み、気温30度以上、湿度100％の蒸し暑い一日でした。天候は不順でしたが写真家コモダヒデオ氏の尽力にて満足の行く竣工写真となりました。新規開業動物病院と移転開業動物病院は設計手法は僅かながら違います。新規開業の場合は無駄なものやあれば役に立つものや将来取り付け可能なものについては、極力省く方向で設計を進める傾向にあり、移転開業の場合は現状動物病院の不備や不満の解決と現状動物病院で過不足ない部分については継承する態度で設計を進めます。自ずと出来上がる図面には違いが現れ、図面の違いは工事費用の高低や工事期間の長短となって顕在化します。どちらが良い悪いではなく、設計の方向として上記のような傾向にあるということに過ぎませんが、動物病院のコストや工期に重きを置く場合は参考になるものと思います。
	かねこ動物病院　診察室

待つことも賢明	2016年9月11日
動物病院を開業するために全体工程を考慮し開業時期を決定するのは常識の範疇です。新規開業を考えるほとんどの先生方は2月～3月開業を目論んで計画を遂行します。動物病院の繁忙期は4月から始まること、新規顧客誘導にとって狂犬病やワクチン接種、フィラリア処方等が4月から需要が上がることを思えば、ある程度の客足が想定でき新規開業病院にも足の運び易い2～3月時期の新規開業は妥当な考えです。動物病院に限らず建築工事のほとんどが年度末にあたる3月末引渡しで動いています。必然3月末竣工物件の数は日本中に大量に存在し年度末の1～3月は建築業者がもっとも多忙な時期になります。 3月末に建物の引渡しを迎える物件が多数を占める建築業者にとって4月中旬以降着工の工事は非常にありがたい仕事です。40坪程度の新築工事であれば5月着工し9月頃引渡し、60～70坪程度の動物病院併用住宅であれば11月頃引渡しが可能で、100坪を超える動物病院も年末から年始に掛けて引き渡す手順になります。テナント工事であれば着工から竣工まで1～2ヶ月程度ですから7月頃にはテナント引渡しが可能になります。動物病院開業の時期を他の建物の工事と競合せずに行うことが可能ならば、工事時期をずらして工事業者の繁忙時期をはずして行うことも考慮に入れながら工期と開業時期の検討をするのも賢明な判断の一つであろうと思います。
	かねこ動物病院受付カウンター

ダーティールーム	2016年9月10日
正式な名称ではないと思いますが、動物病院の診療中の毛刈りやドライヤーを使用する部屋を指します。（トリミング併設動物病院のトリミング関係諸室ではありません。）動物病院は特別な処置をしなくとも毛が舞います。特にドライヤーを使用する場所は大量の毛が舞い散乱します。処置室内の動物用シンクや診察台で毛刈りやドライヤーを使用すると処置室でその他の作業が出来ない状況になるほど毛が室内に散乱します。検査台や薬台を処置室コーナーに設けた場合は、検査機器や薬に毛が降り積もります。動物病院の医療機器は動物病院の使用状況を考慮して作られているものと思いますので少々の毛の積もりや室内を舞う微細な毛如きで壊れたり寿命が短くなるようなことは少ないと思いますが、動物病院に使用する換気扇や空調機器、冷蔵庫や電子レンジや家庭用家電製品は大量の毛が舞う部屋での使用は想定外の事情になります。大量の毛が舞う部屋で使用する家電製品は故障し易く壊れやすいのです。家電製品が壊れても取り替えが効きますが、大量の毛が舞い環境の悪い処置室は動物への診療環境としても病院内で働く人間にとっても良好な環境ではなく、悪質な環境は診療サービスの低下と働く人間の健康の低下を招き、さらには仕事の意欲低下も招きます。良好な診療環境を維持し質の高い診療サービスを提供するためにも、診療作業と診療オペレーションを再検討して、処置室作業を見直し、ドライヤーの使用や水洗い専用の部屋を処置室の一角に設けることも一考ではなかろうかと思っております。
	かねこ動物病院

延床面積の違い	2016年9月9日
確認申請延床面積と登記上の延床面積は同じ面積にならない場合があります。確認申請延床面積は建築基準法の算定方法に準じて算出しますので、明らかに室内ではない外部軒下や駐車スペース、玄関ポーチや柱に囲まれた外部通路も延床面積に参入することがあります。一方、登記上の延床面積は屋根及び周壁又はこれに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものをいうと規定されています。「天井があって３方向以上が壁やガラスなどで囲まれていて、床から一番高い天井までの高さが1.5m以上の部分」を登記床面積に算入することになります。登記上の延床面積は室内面積を差し、壁に囲まれた内部＝室内のみを延床面積としています。建築確認申請は建築基準法に基づく申請行為で、不動産登記は、民法・不動産登記法及びその他政令等によって規律されており、法律が異なることにより延床面積の算定方法も異なります。動物病院併用住宅を計画し、住宅ローンを利用する場合、住宅延床面積が動物病院延床面積よりも広くなっていることが借り入れの条件になります。住宅部分の確認申請延床面積が動物病院延床面積よりも広くなっていても、登記上の住宅部分の延床面積が動物病院延床面積よりも広ければ、問題なく住宅ローンの借り入れは可能になります。建築確認申請の床面積と登記簿の床面積の違いについて、融資窓口の銀行等から説明が求められる時があります。床面積の違う理由を明快にして異なる面積内容の要因を判断できる図面（理由書と呼ばれています）の提出を銀行から要求されることもあります。ローン借り入れの担当者に住宅面積と動物病院面積の比率について確認申請面積を根拠に不備を指摘された時には、登記上の延床面積と確認申請上の延床面積が異なることを思い出し、面積の積算根拠を確認することで解決する可能性もあります。
	横浜市戸建て動物病院平面図

動物用シンクの振れ止め	2016年9月8日
処置室に据えられる動物用シンクが診療作業中に動いてどうにも使い難いと言うご意見を多数頂き、対処法を検討している最中ですが、現状の対処方法をとりあえずご紹介致します。市中に出回っている動物用シンクでそれなりのお値段の張るものは動物用シンク底部が床に刷り付く形になっているので底部と壁に接触する側面部分をシーリング処理することである程度の固定が出来ます。動物用シンクの廉価品はシンク四隅に4本の足が付いており、四本足の最下部は可動家具と同様のつくりになっています。動物用シンクには給排水設備がセットになりますから動かして使用するには適していないのですが、もともと動かして使用することを念頭に廉価品の動物用シンクはつくられているような構造です。動物用シンクを使用する場合は動物の保定と処置作業を同時に進めることになり、使用上、シンクに体重を掛けることやシンクに寄りかかり作業を進める状況が生まれます。必然、動物用シンクが簡単に動いてしまうことは作業する上で好ましくない状況になります。ステンレス円柱棒（ハンガーパイプ等）を固定する金具を座板側を床側にして動物用シンクの四本足の先端部に差込みます。動物用シンクを設置する位置にシンクを置き、固定金具を床にビス止めします。床がコンクリート下地の場合はコンクリート用ビスを木製下地の床の場合は木製ビスで金具を装着し、4本足のすべてに固定金具を取り付けると動物用シンクの固定は終了です。動物用シンクを壁付きに置く場合はシンク天板と壁の入り隅にシーリングを行い水が壁伝いに床に伝わらないよう処理します。
	動物用シンクの脚に取り付けた振れ止め

新幹線・椅子（2）	2016年9月1日
個人の側に含まれている建築に関しては特定の人に素敵と思われれば良いわけで、個人的な世界を越えない範疇でプライベートを満喫することに異を唱える必要もありません。公的な範疇に入る建築に関しては“大衆に消費されるモノ”と“表現しようとするモノ”の間を行きつ戻りつしながら落とし処の所在を探し続けます。動物病院は獣医師の先生方の個人的な嗜好や思い入れや夢を受け入れながらも開業後に来院するお客様の感情や情動に優しく心地良く訴えかける建築となることも求められ、設計にも個（先生）と公（お客様）の間のバランスを要します。新たな動物病院設計の依頼が来る度に、先生方の希望を聞いては来院するであろうお客様をイメージしてクライアントゾーンの骨太な方針を模索する日々なのですが、骨太の方針等は簡単に手に入れられるものでもありませし、手に入れたとたんに、詰まらないデザインやありふれた建築になるであろうとも想像できます。新幹線の椅子のようなプロトタイプとなるような動物病院をつくる能力も、つくるつもりもなく、およそ建築と言うものは個別解の集積が計画となり建築士の個人的な思考と建研によって培われてきた公的な思考とが相俟って建物になっていくものと思います。設計の悩みが継続している状況は、建築士としては大変幸せな時間を過ごしていると思いますが、一度で良いのでゴールラインの在り処を見させてもらいたいと誰にとも無くお願いしたくなることもあるものです。
	かねこ動物病院出入口横のベンチ

新幹線・椅子（1）	2016年8月31日
誰もが座り心地が良くなる様に工学の粋を集めて造られたのが新幹線の椅子です。人間工学に基づいて最も座り易い椅子を開発すべく計算し設計し実現した素晴らしい椅子、お年寄りから子供まで老若男女を問わず体型や体格の差を物ともせず、すべての日本人にとって座り心地が良いと感じられる様に設計されたそれはそれは素晴らしい椅子が新幹線の椅子です。言葉とは無情かつ非情なもので誰もが座り易い最高の椅子の裏に潜む隠された真意は誰一人として完璧にフィットすることがない椅子ということになります。およそデザインに関わる物事のすべては最も座り易い新幹線の椅子に似通った話であろうと感じています。大多数の人に素敵と思われるデザインは大衆に消費され凡庸になるデザインであり特定の人にフィットするものではなく、特定の人に好まれるデザインは大多数の人からは敬遠される代物となります。建築は純粋にデザインの領域に含まれるものではありませんが、デザインを建築や建物に置き換えると、大多数の人に素敵と思われる建築は大衆に消費され凡庸になる建築であり特定の人にフィットするものではなく、特定の人に好まれる建築は大多数の人からは敬遠される代物になります。
	新幹線　椅子

予備入院室 or 防音入院室	2016年8月27日
通常、動物病院には犬用と猫用入院室があります。2つの入院室に加えてエキゾチック診療の多い動物病院ではエキゾチック用の入院室を設けます。使用回数が少ないとはいえ隔離室も備えるべき部屋です。大型犬専用の入院室を犬用入院室廻りに付属する場合もあり、それらの入院室に付随して入院準備室や給餌室、リネン室等を含めて入院室関係諸室として通常は平面計画を進めます。入院室とパドックの関係や入院室とワークゾーンの位置関係、音や臭いの問題への対処、待合室からの面会動線等々、入院諸室配置も平面計画では熟考を要する場所です。動物病院の床面積が十分に取れないテナント動物病院や戸建て動物病院では入院室を処置室廻りに配置し診療中に入院室内部の様子を視認できるような配置にしますが、動物病院規模が大きくなると常時視認が必要なペットは処置室の一角に置いたＩＣＵで容態を確認し、その他のペットは一般の入院室に置くことが多くなります。入院室には様々な容態のペットが入ります。ほぼ健康に近い状態で元気が良いペットから憔悴気味のペットまでが混在し威勢の良いペットはここぞとばかりに吼え続けますから、他のペットから分離しての入院室が必要になります。防音入院室はステンレスケージ4ケージ程度が入れば機能し、部屋寸法は幅1300㎜×奥行き1600㎜程度で間に合います。入院室内で作業をする場合は幅1300㎜×奥行き2000㎜程度あれば足りるでしょう。より良い入院室環境と診療環境を整え、動物病院全体の環境向上のためにも、もう一つの予備入院室をつくることは、診療側とクライアント側双方にとって有益であり、動物病院としての付加価値向上に繋がるものと思います。
	入院室と入院用ステンレスケージ

”つ”	2016年8月26日
名古屋駅から鳥羽行きの快速電車に乗り1時間ほどで三重県の県庁所在地“津”に着きます。ホームの鉄骨柱に掛けられた駅名版には“つ”と書かれています。市の名称が“津”で駅の名称も“津”ですから“つ”と書かれているのは当然のことですが、“つ”と書かれた駅名版の上下の余白の多さに“クッウッ”と笑みが漏れました。駅名版の上下の空きのバランスを思うと平仮名一字では辛そうですから“つぅ”ぐらいにするのは如何なものかと思いを巡らした次第です。東北地方の駅名ならば“つぅッ”で書き言葉と話し言葉とがドンピシャなんだけどなぁ〜。
	津駅　駅名版

願掛け	2016年8月25日
動物病院が着工すると設計監理が始まります。設計監理は定期的に工事現場に行き設計図書に準じて工事が行われている事を確認する業務です。日本中、何処の工事現場であろうと定期的に設計監理を行います。日本は何処に行っても数多くの寺社があります。（北海道は寺社が少ない印象を持っていますが・・・）設計監理に出向く土地にも少なからず寺社はあり、祈る場所に事欠かないのは微笑ましくありがたいことと思います。設計を生業にしているからと言っても寺社建築に深い造詣を持っているとは限らず、日本古来の伝統的建築について深い含蓄があるわけでもありませんが、寺社建築及び境内や神の宿る山や寺社廻りの自然を鑑賞するのは吝かではなく、時間が空くと、工事現場近辺の寺社にふらりと立ち寄ります。個人的に信心深い人間の範疇に入る部類ではないと思いますが、立ち寄った寺社では賽銭をあげ、鈴を鳴らし、願掛けします。所謂、一般的日本人が行う行為をごく一般的に行います。本日まで家族の健康と事務所の継続を支えて頂きありがとうございます。これからも家族の健康が続き、事務所への仕事の依頼が増えますよう、宜しくお願い申し上げます。それから、動物病院の設計依頼がたくさん来るようお願い申し上げます。二礼～ニ拍～一礼（出雲大社は二礼～四拍～一礼）
	出雲大社

旧志免鉱業所	2016年8月24日
福岡でのテナント動物病院監理のおりに、旧志免鉱業所の遺構を訪ねました。8月の猛暑の中、志免町に入り目的地付近に近ずくと灰色のコンクリート打ち放しの塊が街並みの屋根越しに眼に入ります。生活感のある街並みの向こうにコンクリート打ち放しの巨魁が異形な面持ちで屹立しています。小高い丘の上に、志免鉱業所のコンクリート棟は建っていました。素っ気なく洗練さも無く武骨で朽ち掛けた鉄筋コンクリートの塊が何故にこれ程心を揺さぶるのかわからないのですが、夏の午後の太陽に照らされた塔が放つ求心力に操られ、塔の回りをゆっくりと公転する自分がいました。太宰府天満宮の境内には樹齢千年と言われる太い幹回りの頑強な巨木がありますが、巨木を見る感覚と朽ち掛けつつある鉄筋コンクリート塔から感じる感覚は同じではないけれども、何処か似ているような気がします。樹齢千年の巨木は生長の速度が荒廃の速度よりわずかに長けている様相を呈し、鉄筋コンクリートの巨魁は荒廃の月日をなぞらえて素直な表情を露出し、躯体に刻まれた時の流れを感じます。展覧会の絵を見ているような絵画的な風景でした。
	旧志免鉱業所

ＪＶＢＰ　2016年日本臨床獣医学フォーラム	2016年8月23日
2016年9月23日（金）～25日（日）、日本臨床獣医学フォーラムがホテルニューオータニで開かれます。本年もＡＣプランは獣医学フォーラムにてブース展示を行います。展示会場“鶴”ブース番号071・072・073の3ブースにて動物病院設計の相談や申し込み受付を行っておりますので、セミナーの空き時間にご利用いただければ幸いです。フォーラム開催期間中23日～25日までＡＣプランに参加する建築事務所のフルメンバーで対応しておりますので、新規開業、移転開業、増改築、改修設計等を近い将来に考えている方はご利用をお待ちしております。ＡＣプラン監修の動物病院設計を集約した書籍“理想の動物病院をつくる”の販売も受付致します。動物病院をつくる上での疑問や不明な部分については可能な限りお応えいたします。建築をつくる上で設計以降の見積もりや施工は未だにブラックボックス部分が多く、解らない事や不明なことが多いのが実情です。建物をつくる上で設計が占める位置は特に重要で、誰にでも理解できる図面の作製と詳細な図面指示によって適正な工事金額や良質な建築工事が可能になります。設計監理料を惜しんで理想の動物病院をつくろうと考えること自体が既に理想の動物病院から遠ざかる行為になります。また、それ程こだわりが無いのでそこそこ機能する動物病院であれば本望なので動物病院設計のプロに任せる必要は無いと考える方も多いと思いますが、そこそこの機能の実現を求め適正価格の動物病院を手に入れたいと考えるのならば動物病院設計を熟知した建築士を選定する方が全体予算を適切に配分した機能的な動物病院実現の可能性は高くなります。動物病院の建築に関するあらゆる疑問にお答えする所存ですので、お気軽にＡＣプランブースにお立ち寄り下さい。ご来場をお待ちしております。
	とよだペットクリニック OPE・X線室

地鎮祭費用	2016年8月17日
土木・建築工事などで，工事を始める前に土地の神をまつり，工事の無事を祈る儀式。とこしずめのまつり。土祭り。地祭り。地祝い。（出展：大辞林第三版）建築・土木の工事に着手する前、土地の神を祝ってその工事の無事に済むことを祈る祭りをいう。地(じ)祭りともいって、家主、大工、親戚(しんせき)などが集まり、神職に祈ってもらう。岡山県では新たに屋敷をつくったり、新築をするときは神官、法印、民間の祈祷師(きとうし)を招いて地鎮祭を行ってお祓(はら)いをする。ここでは出雲(いずも)大社で祈念し、大社屋敷の砂をもらってきて敷地に撒(ま)いておくと障(さわ)りがないといわれている。福井県三方(みかた)郡常神(つねかみ)では地祭りといって、新築にとりかかるとき土地を塩で清め、東西南北と書いた幣(へい)を立て、方丈(ほうじょう)さんに拝んでもらうという。これを土(つち)祭りともいっている。火災にあった家では土を掘り取って清い山の土と入れ替えることも行われた。新潟県佐渡島では地祭りといって、敷地の四隅(よすみ)と中央にカワラケと神主の書いた呪文(じゅもん)を入れた竹筒を埋め、中央に祭壇を設け、山の物、海の物、神酒、塩を供えて祈祷し、金神除(こんじんよ)けとして幣束(へいそく)を立ててお祓いをする。（出展：日本大百科全書ニッポニカ) 以下は一般的な地鎮祭の費用を記しています。初穂料：2～3万円お車代：0.5～1万円地鎮祭準備（竹・砂等）：1万円程度お供え物：1～2万円程度
	横浜市の戸建て動物病院待合ラウンジ内観パース

動物病院開業15坪	2016年8月16日
15坪は50㎡です。承知のこととは思いますが5m×10mが50㎡です。50㎡程度のテナントは日本中の都市部の何処にでもある広さのテナント面積です。動物病院を開業する面積としては決して広い面積ではなく動物病院機能を満足させられる余裕があるとは言い難い面積です。動物病院機能を満足するようにつくろうと考えた場合、かなり厳しい面積と思われる広さになります。しかし、厳しい、至難、無理だと言われると興味が湧き、満足出来ないと言われると挑戦したくなるのが建築士の職能で、15坪のテナントに可能な限り、機能的で経済的な動物病院を提案しようではないかと奮い立ち、15坪テナント動物病院のサービスを展開して行こうと思案しております。床面積15坪、50㎡以下のテナントに対応する動物病院新規開業支援サービスです。動物病院としての必要な機能と設備を抽出し、動物病院としての良好な環境を維持しながら、柔らかな設計発想と創意工夫で狭さを克服し、多くの動物病院設計にたずさわってきた知恵と経験でコストを適正化し、個性的で表情豊かなクライアントゾーンを提案する新規開業テナント動物病院サービスを模索中です。
	ごんた動物病院設計監理：コモダアトリエ

目玉づくり（2）	2016年8月12日
開業は冒険の始まりですが楽しい冒険にするのか険しい冒険にするのかは出発点ではわからないものです。楽しかろうが険しかろうが辛かろうが冒険を全うできればそこそこ動物病院としての使命を果たしたと言えると思いますが、冒険が途中で頓挫してしまっては元も子もなくなります。将来のことなど判らないからと言って成り行きに任せていては何の特徴もない在り来りの動物病院が出来てしまい、冒険を続ける体力も気力も続かない可能性が高くなります。動物病院の必要諸室と要望を聞きヒアリングを行い、動物病院設備や医療機器導入等の諸事を数時間伺えば開業動物病院の平面図作製の手掛かりは得られ、こだわりを持たなければごく普通の使い手の良い動物病院平面図の作成は可能です。可能ですがそのような状況で提案する動物病院平面図は使い手は悪くないのですが大事な何かが欠落している感じがします。設計する側に立つものとして想うことは、計画をする目玉が無いのです。設計者側から見ると計画する際の悩みどころや課題が無く、目標が希薄な感じがするということです。言葉は悪いですがそのような状況下では簡単に平面計画は出来上がりますが出来上がった図面に個性やこだわりや強い意志を感じないと言えば良いでしょうか。目玉は動物病院開業に関わる建築士がつくるものではありません。目玉になるような想いやこだわりを開業しようとする先生方から吐露されて、悩み、考え、悶え、設計図に想いが載るように建築士が提案して行くものです。建築で思いのすべてが解決でき実現できるとは言えませんが、開業する動物病院への強い想いと情熱は開業に関わる人に感染していくものです。やりたいこと、やりたいけれども出来ないこと、将来やりたいことや現状実現は無理と思っているけれども自分が思い続けている理想の動物病院への想い等々、獣医師の先生から建築士に伝えることには少々の時間と少々入り組んだ言葉が必要になりますがお金が掛かるわけではありませんから、伝えることを惜しまない気持ちが大事なことと思います。
	コリーヌ動物病院設計監理：ジュンメ建築設計事務所

目玉づくり（1）	2016年8月11日
動物病院を開業するにあたり、なんとなく世の中に既に存在する数多の動物病院と同じような動物病院をつくろうと考えることはごく普通のことで悪いことではないと思いますが、これから動物病院を開業しようとする獣医師としては、些か物足りなさを感じます。動物病院は既に需要を超える数ほどあり、開業しようとする先生の思いとは無関係に、開業すなわち競合そして淘汰の世界に晒されます。獣医師の先生が心優しかろうが愛に満ち溢れていようが小心で傷つき易かろうが、開業と同時に近隣のお客様の厳しい品定めにも晒されます。動物病院を開業すれば誰でも生きていける時代は遠い過去の話になっています。だからと言って開業せずに獣医師として生きる術の選択肢が多く多様なわけでもありません。誰でも生きていける時代は動物病院も獣医師も不足し、尚且つペット数は右肩上がりに増えていたのが大きな要因で、技術が未熟であろうが接客がずぼらであろうがお客様が動物病院を選ぶ事が出来なかったから近くの動物病院に行かざるを得ず、世の中の状況が開業動物病院を隆盛させる状況下にあっただけの話です。個人の努力や動物病院としての経験の積み重ねは同時期に開業した動物病院には大きな問題ではなかったのですが、動物病院数が増え、同業他社との競争が激しくなると集客数が減るのは当然のことで真摯に接客をしていなかった動物病院が苦境に立たされるのはごく当たり前のことです。
	コリーヌ動物病院設計監理：ジュンメ建築設計事務所

動物病院内装工事の相場観	2016年8月6日
よく聞かれることのひとつに動物病院内装工事の相場があります。おそらく内装工事の坪単価の相場を知りたいということであろうと理解しています。動物病院のクライアントゾーンは思い入れや希望・要望によって内装工事費用は大きく変動します。デザインや材料へのこだわりが深ければ内装工事費用は高くなり、質感や設備機能を充実させればさらに工事費用は上がります。ワークゾーンに関しても基本的には同じことが言えますが、ワークゾーンはお客様が日常目にする場所でも無く機能を優先させメンテナンス性能を重視し、特別高級な機能や性能を要求されなければ内装工事費用の変動幅は小幅です。設計者サイドにクライアントの要求事項が届いていない段階での内装工事費用の相場はクライアントゾーンが40万円/坪前後、ワークゾーンは35万円/坪前後程度と応えることが多いと思います。内装工事費用の基準になるものは設計図です。設計図が無ければ内装工事費用は積算できません。設計図を作成するにはクライアントへのヒアリングと建築への想い、動物病院機能への要求深度と要望事項を聞き、整理しなければなりません。高く深い要求を掲げられると高い工事費用になり、一般的な事項の要求レベルであれば通常工事費用あたりに落ち着きます。建築的な欲求を満たすためには大概費用増になります。欲求を満たすためには何事にも負荷が掛かり建築的欲求を満たすために掛かる負荷は工事費用増加と設計及び工事期間延長という状況になります。要求が高ければ工事費用は嵩み設計及び工事期間が長くなるということです。
	コリーヌ動物病院設計監理：ジュンメ建築設計事務所

筑紫野市かねこ動物病院	2016年8月5日
2016年9月中旬に福岡県筑紫野市にかねこ動物病院が開業します。鹿児島本線（原田駅）と西鉄線（津古駅）に挟まれた地域の原田駅寄り、原田駅から南東方向に徒歩12分の道路沿いに開院するテナント動物病院です。テナント前に5台分の駐車スペースがあり、出入り口前には2階バルコニーの庇が突き出した雨掛かりのない外待合スペース、動物逃走防止用の風除室、ゆとりあるＬ型待合ラウンジ、広く待合に開かれた受付カウンター、お客様用洗面とトイレが付属するクライアントゾーンと広めの診察室2室、処置室を中心に配された入院室、手術室、レントゲン室、処置室廻りには検査台、薬コーナー、オペ準備室を配した動物病院です。入院室は犬入院と猫入院を完全分離し、犬入院には大型犬用入院室を隣接しています。入院室とは別で隔離スペースも完備する動物病院です。地域の人に選ばれ長く愛される筑紫野市の動物診療の一翼を担う動物病院になることを願っています。かねこ動物病院：TEL　092-926-9115
	かねこ動物病院　MAP

動物病院開業考25	2016年8月4日
動物病院の設計や建築一般事項について開業考にて書き連ねてきました。個人的には備忘録のような形式ですが、これから開業を考えている先生方に読んで頂くこと、移転や改修を検討する開業獣医師の方に読んで頂くことを念頭に項を進めています。また、現状の動物病院の状況に立ち止まることなくクライアントが求める動物病院とは何なのかを動物病院の設計者として考えています。この場合のクライアントとは二重の意味があり、クライアントの1人は動物病院を開業・運営する獣医師の先生方、クライアントの一方は動物病院を利用するお客様を指しています。獣医師の求める動物病院とお客様であるペットの飼い主が求める動物病院にはどこかすれ違いがあるように感じています。具体的にそのすれ違いが何のなのかは今のところ具体的にはなっていませんが、獣医師の先生方との打合せや話し合いの中から不具合を浮き彫りにして、設計や工事段階ですれ違いの隙間を少しずつではありますが埋めて行くことはできると思っています。動物病院の建築や設計を含むハードな部分はまだまだ未完成で完成形ではありませんから、今後動物病院のサービスや機能の変化に伴いマイナーチェンジが繰り返されると思います。良いサービスや円滑な機能は残り、受け入れられないサービスや機能は廃れます。一見いつもと変わらない風景は実は常に動的な平衡状態を保っているに過ぎません。動物病院建築も世の常と同様、常に流動しながら平衡状態を保っている状況です。動物病院開業考も動的平衡状態の中から新たな論考が見つかるものと期待しています。
	とよだペットクリニック

掲載写真は動物病院設計ＡＣプランで設計監理した動物病院の写真です。

開業考
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開業考
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開業考
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