軽量鉄骨造建物の改修（2） |
2013年4月16日 |  |
| 軽量鉄骨造の建物を動物病院に改修する場合は、既存の柱位置と構造壁の位置を動かさずに、動物病院諸室を建物内に落とし込んでいかなければならないので、難解なパズルを解くように平面計画の推敲を重ねていかなければなりません。既存壁や既存柱を上手く利用しながら、時間を費やして平面計画を練り上げても、理想とするあるいは希望する動物病院の平面計画に近づくことができないことも多々あります。 鉄骨造だから改修計画や改修工事は容易、と思う前に鉄骨造の種類をご確認下さい。動物病院として改修を希望する建物が鉄骨造と明記されていても、重量鉄骨造なのか軽量鉄骨造なのかを確認することが肝要です。鉄骨造の違いによって改修にかかる施工費用に大きな差が出る（重量鉄骨造＜軽量鉄骨造）ことを理解していただければ、テナントや既存戸建の改修候補を探す際の目安がひとつ増えることになり、選択条件の精度も上がります。 |
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| しのざき動物病院 クライアントゾーン改修 |
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軽量鉄骨造建物の改修（1） |
2013年4月15日 | |
| 鉄骨造建物にはざっくりと分類して構造が異なる2種類の建物構造があります。重量鉄骨造と軽量鉄骨造、使用されている漢字の違いでなんとなく2つの建物の違いがわかる感じを持たれると思いますが、重量鉄骨造は鉄骨の肉厚が規定以上の厚さを持ち、肉厚の鉄骨部材を用い柱と梁によるラーメン構造によって建物構造を保持する建築構造の建物です。ラーメン構造とは主要構造が柱（垂直部材）と梁（水平部材）で構成されている建物構造の建築名称です。重量鉄骨造建物の主要構造は柱と梁、そして床となり、その他の部材は構造的には不要、柱と柱の間隔も広く大きな空間を構成できる構造です。内部の間仕切り壁は自由に配置可能、改修する建物としては大変改修し易い、自由な平面計画が可能な建築構造です。一方、軽量鉄骨造は薄肉の鉄骨部材を素材にした柱や梁部材を使用して建物の骨組みをつくるのですが、柱と梁だけでは建物の構造強度が得られないので、柱と梁で囲われた四角形の中に鉄筋でできた筋違を斜めに入れ込んで構造強度を保つ構法の建物です。加えて、床も強度が不足するために梁で囲われた四角形の中にも水平筋違を入れ込んで建物強度を保ちます。柱間の距離は木造軸組み構法程度の間隔（2.7ｍ〜3.6ｍ）程度で大きな空間がつくり難く、建物内部に筋違のある構造壁と独立柱が点在し、動かすことができない壁があり、建物改修設計をするための障害になる場合もあります。既存建物内にある壁をすべて取り払い自由な平面計画を実現したいにも関わらず、構造壁部分は撤去できず、建物内部の柱位置も既存状態から移動することができません。簡単に言うと改修するには融通の利かない建物と言えます。 |  |
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| 動物病院えむ 受付と診察室ドア | ||
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| 動物病院えむ 受付と待合ラウンジ |
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動物病院に住む（27）ー適正価格3ー | 2013年4月12日 | |
| 建築の材料単価は材料の品質や耐久性能が同等のものであれば、同じような価格になっているのが現状で、原材料を除くいわゆる既製品に関してはインターネット上で最低価格なるものが示されており、施工業者の仕入値もおおよそ検討がつく状況です。街場の建設業者が建築資材を仕入れる場合、工事を請け負った建設業者が仕入れる場合と下請け専門業者が材料を仕入れる場合があります。建設業の古くからの悪しき習慣で、建築資材の仕入代金に手間代を載せることが一般的に行われており、多くの業者の手を材料や資材が通過するごとに手間代が加算される仕組みが未だに継続されています。この手間代は工事手間代や取り付け手間代ではありません。川上から川下に流れていく建築資材には通過加算料と言っても過言ではない上乗せ金を重ねていく慣習があります。多くの業者を経て現場に辿り着いた建築資材が高くなる負のシステムが出来上がっているのです。 良質な建築業者は建築資材や既製品価格は仕入れ値のまま見積り計上し、取り付け費用や工事手間代を別途計上する見積を提出します。材料単価や製品単価がひと目でわかる工事手間代や設置費用もわかりやすい見積りになっているのです。善良でない建築業者は材料単価や製品単価が見えないように工事手間や取り付け費用込みの費用を見積りに計上します。 その他、見積り費用の違いには、建築業者の置かれている状況（工事現場の多寡）や見積り物件が施工したい物件であるか否か、建築業者の技術力のレベル差等、要因は多様です。 いずれにせよ、見積書に大きな勘違いや間違いがなければ、最も安価な工事金額で見積りを提出した業者と見積内容の摺り合わせを行い、工事契約へ向けて進んでいくことになります。最終的に工事契約をした建築業者が提出した工事見積金額が動物病院併用住宅の適正価格と言うことになるのです。 |
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| 動物病院併用住宅 外観 外観パース比較検討案 |
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動物病院に住む（26）ー適正価格2ー | 2013年4月11日 | |
| 同じ仕様で、同じ材料、同じ数量、しかも同じ性能の製品を使用した場合に、施工業者の見積りに違いが出るのはなぜか？という疑問をもたれる方も多々いることと思います。すべて同じものを使用するのですから、最終的な工事金額に大きな差が出ないのが常識であろうと考えられるのも当然です。私も常々そのように思っています。しかしながら、建築の見積り金額は同様の仕様、同様の材料、同様の数量、同様の製品性能の機器類を指示している設計図書において、見積り結果はとんでもなく違いの出る工事金額になるのです。4000万円が最低工事金額の見積りが提出されたと仮定すると、最も高い工事金額は6000万円超となり、4000万円〜6000万円の間にその他の見積り金額が点在する様相を示します。 さらに幅広い価格帯で見積りが提出される場合も多々あります。提出された見積り内容に問題があれば金額差の理由は明白です。指示された材料より性質の劣る材料を見積もっている、図面指示された数量に満たない材料しか拾っていない、性能不足の製品を選んで見積りをしている、ハイスペックの材料や製品を見積もっている、図面指示を無視して自社が通常行っている建築工事要領にて見積りを提出している等々が見積書のなかに散見されれば、そのような業者は工事契約する業者としては不適切です。前述したようなことがないにも関わらず見積り金額には大きな差が出ます。不思議、不思議です。 |
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| 動物病院併用住宅 待合ラウンジ 内観パース |
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動物病院に住む（25）ー適正価格１ー | 2013年4月10日 | |
| 動物病院併用住宅に適正価格はあるのか？・・・ありません・・・終わり。これでは話しの進みようがないですね。双六のあがりに動物病院併用住宅の“適正価格”を据えて、あがりから振り出しまで駒を戻しながら考えてみることにしましょうか。 適性価格とは希望する動物病院併用住宅が施工可能な最低価格のことであろうと思います（たぶん）。最低価格は複数の施工業者の競争見積りの比較によって始めて明らかになるものです。各社の競争見積りは同じ仕様で見積りされていることが比較の条件となります。同じ仕様とは、同じ材料を拾い、同じ数量を拾い、同じ性能の製品を拾っているということです。同じ仕様の見積りを提出してもらうためには、見積り業者各社にまったく同じ図面と仕様の設計図書から見積りをしてもらわなければなりません。どの施工業者が見積りしても同じ材料、同じ数量（業者によって数量には多少の増減があります）、同じ性能の項目の見積りが提示されるためには、正確な実施設計図が必要です。正確な実施設計図が描ける職能を持っているのは建築に関わる職能の中でも設計事務所が抜きん出ています（おそらく）。ただし設計事務所にも図面作成のみを請け負っている下請け専門の設計事務所も存在しますから、あらゆる設計事務所が正確な実施設計を描けるとは限りません。正確な実施設計を書くためにはクライアント要望と土地条件、建築基準法の条件を十分に把握した図面でなければなりません。加えて動物病院併用住宅の設計には動物病院への造詣が深いことも設計条件の重要事項です。 双六の終点が“動物病院併用住宅の適正価格”とすると双六をゴールから逆にたどればスタート地点で選ぶべき駒が見えてきます。スタート地点にはいろいろな駒が転がっています。設計事務所、建設業者、コンサルタント、住宅メーカー、親戚の工務店等々、駒選びで最終ゴールはある程度決まってしまうといっても過言ではないかもしれないというお話しでした。 |
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| 動物病院併用住宅 待合ラウンジ 内観パース |
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動物病院計画（24）ーシンプルな構成（4）ー | 2013年4月9日 | |
| 平面図が決してシンプルな形（正方形や長方形）になっていなくても、立体の構成として単純な直方体や立方体の組み合わせで構成されていれば、建築の施工費用が法外に高くなることはありません。単純な形態の箱が何個、どのように組み合わされているか、建物立面図を構成する途上であらわにしていくことが立面図の完成に繋がっていきます。光を入れるべきところには光を入れる、風を通すべきところには風を通す、外部から内部を見て欲しい場所には透明ガラスを入れる、見えては困るけれども外光を取り入れたいところにはスリガラスやガラスブロックを使う。目指すところ、目標の地点は、クライアントゾーンは豊かに、ワークゾーンは動きやすい動線と明快な諸室のつながり、住宅は快適に、日常生活は外部からの視線を気にすることなく等々、それらをほとんど網羅した上でのシンプルな形態の組み合わせによる動物病院併用住宅を実現することです。 |  |
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| 動物病院併用住宅 外観 |
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動物病院計画（23）ーシンプルな構成（3）ー | 2013年4月8日 | |
| 平面図を思案している過程で、平面図がシンプルな形態になることはあまりありません。動線を考慮し、診察工程を考慮し、お客様の動きを考慮し、行き交う視線を考慮し、機能を損なわず、与えられた土地に納まり、駐車台数を確保し、設備機器類を目立たせず、健康的で快適な住居を持ち、洗濯物を気兼ねなく干せる平面計画は単純な形にはなりません。動物病院も住宅も単純な形態にはならず、単純な形態でないものが上下に重なる建物の形態は当然、複雑な様相を帯び始めます。複雑な様相のままでは構造的にも複雑な架構や大断面の柱や梁が必要になり、建築費用も高止まり状態になります。当然、施工を行う工務店や建設会社の見積りも非常に高い領域の範囲内で提出されることが予想されます。 そこで、複雑に積層する平面形態をシンプルな形に分節して行く作業が必要になります。基本構想案の終盤、断面図と立面図及び平面図を行きつ戻りつしながら図面の中を歩き回る作業工程の中で、建物をシンプルな形態の組み合わせとして再構成する作業を行うのです。平面図の形がどんなに複雑になっても、その複雑系の中に隠れている単純な形態を拾い出す作業といったほうがわかりやすいかもしれません。 |
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| 戸建動物病院 外観 |
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動物病院計画（22）ーシンプルな構成（2）ー | 2013年4月6日 | |
| とはいえ、我々は建築士の職能集団、動物病院も住宅も数知れず（数は知れています。話の勢い上、数知れずと書かせていただいています。失礼・・・）つくり続けてきているのであり、動物病院と住宅の機能の違いを乗り越えて動物病院併用住宅も豊かな発想力と積み重ねてきた技術と経験を武器として、良質な提案を続け、計画をつくり続けていく所存です。と、なぜか、所信表明のような文章になってしまいましたが、動物病院併用住宅の平面図作成過程を概ね、説明していたのでした。 平面図に概ね納まりがついてきた時期に断面図の考察が始まります。建物の高さ関係の整合性をとり、GL（グランドライン・地盤面高さ）と1階動物病院FL（フロアライン・1階床高さ）を決め、1階と2階の階高を1階天井高さと1階天井懐の有効寸法から導き出し、1階天井懐に納まるであろう空調換気配管や照明器具の寸法を考慮し、1階と2階を結ぶ階段の踏み面や蹴上げの寸法と階段段数を整理していきます。平面図と断面図を何度も行き来して、平面図と断面図の整合性を確認する中で、建物の外観が図面として表れ出てくるという一連の流れが動物病院併用住宅の基本構想案の流れです。 |
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| 戸建動物病院 外観 |
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動物病院計画（21）ーシンプルな構成（1）ー | 2013年4月5日 | |
| 建物は平面計画が基本になります。動物病院併用住宅も基本は平面計画です。木造2階建て以上の動物病院併用住宅は1階動物病院、2階に住宅を配する割合が高く、数多く計画しています。動物病院の平面図はクライアント動線を吟味しワーク動線を図面上でシミュレートすることで動線計画が浮かび上がり、平面図の枠組みが図面として表出してきます。もちろん動線計画のみで平面図が完成に至るわけでなく、動線計画が納まると各室の寸法やドア位置、ワークゾーン各室間でのアイコンタクトや働く人の気配を感じることができる仕掛けを平面図に挿入しながら計画を進めていきます。 木造の建物では、1階の柱や壁位置と2階の柱や壁位置をできる限り合わせて行く方向に進めていくことが、工事費用の軽減と建物構造上の強度確保が可能になることです。同様に1階の筋違位置と2階の筋違位置を可能な限り近似位置に配することも、建物構造強度上げることに役立ちます。建物1階機能（動物病院）と2階機能（住宅）はまったく別なものであるにも関わらず、構造的及び経済的な観点からは1階と2階の柱や壁位置を合わせる事が求められるのです。（これ、結構、辛いことです）。 |
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| 動物病院併用住宅 |
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動物病院の展望（20）ー将来改修と拡張（2）ー | 2013年4月4日 | |
| 動物病院の階層が分かれる場合に、動物病院諸室の振り分けも考えておかなければなりません。1階にはクライアントゾーン諸室（風除室・待合室・受付・診察室・客用WC）とワークゾーンの必要諸室を配します。最低限1階に設けたほうが良い動物病院諸室は検査室・処置室でしょうか。面積に余裕があれば入院室やＸ線室・OPE室・フード庫も1階に配したい部屋です。2階には、スタッフ室、院長室、会議室、ホテル機能、職員WC、更衣室、リハビリ室、隔離室、更衣室等々、当初計画の段階で将来配置の大まかな構想を検討しておいたほうが良いと思います。 動物病院の拡張など遠い未来の当てにならない夢想であると思っている獣医師の先生方、動物病院を新設した数年後に拡張を余儀なくされる（これは嬉しい悲鳴です）先生方が多々いるのです。先見の目は一般人には持ち得ない代物ですが、先見への意志は誰でも持ち続けることができます。 |
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| 動物病院併用住宅 待合ラウンジ 設計監理：アークビジョン |
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動物病院の展望（19）ー将来改修と拡張（1）ー | 2013年4月3日 | |
| 敷地面積に余裕があり将来の増築に十分な広さが確保できている土地ならば、1階動物病院を水平方向に将来拡張する意図を推し量り当初の建築計画を推敲していく事で、将来の増築も動物病院を開業しながら支障なく増築可能とすることが可能です。土地が広ければ将来の動物病院拡張も容易なのですが、決して広くない土地、あるいは狭い土地に動物病院併用住宅を計画する場合、どのような将来構想を目論んで計画を建てていくことが良いでしょうか。水平方向への将来拡張は物理的に不可能です。動物病院を利用するお客様が増え、獣医師や従業員の人数も増加し、診察室の増設や入院室の増設、スタッフ室やフード庫の追加、医療機器野更新や増設等々、動物病院を利用するお客様へのサービスクオリティーを上げながらスムーズに動物病院を拡張する必要が出てきた場合の対処方法を頭の隅に置きながら現状計画を進めていく必要があります。 1階動物病院、2階住宅の場合では、2階の住宅を将来動物病院として利用することも視野に入れておく必要があります。2階住宅の内部間仕切りが容易に変更可能なように、2階内部壁には構造壁をつくらないこと、2階の電気容量に余裕を持っておくこと、水廻り位置が増えることを見込んで1階と2階の天井懐の配管スペース確保を想定すること、1階と2階を繋ぐ階段位置を将来変更を見越した上で配置すること等々、計画当初より2階改築を念頭において計画を進めることで、5年後あるいは10年後の住宅から動物病院への改修工事も円滑に進行させることができます。 |
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| 動物病院併用住宅 吹き抜け待合ラウンジ 設計監理：アークビジョン |
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動物病院に住む（18）ー空調機置場ー | 2013年4月2日 | |
| 道路から見える位置に空調室外機が並んでいる光景が好きな方がいないことはないと思いますが、見たくない方（つくる側としては見せたくない）のほうが多いと思います。空調機（室内エアコン）は動物病院には必須の設備機器です。動物病院は小さく仕切られた小部屋が多く、動物病院だけでも空調機の台数は10台近くになります。加えて住宅部分の空調機台数も合わせると十数台の空調機を設置し、同数の空調室外機を建物外部の適当な場所に配さなければなりません。 十数台の空調室外機が縦横に積み重なり稼動している姿は壮観ともいえなくはないのですが、空調室外機が並ぶ光景をお客様に見せることは動物病院併用住宅にとっての見せ場とは言えません。可能な限りお客様が出入りする主要動線や駐車場側から死角になる位置に目立たないように配置するのが肝要と思います。空調機と空調室外機を繋ぐ配管類も可能な限り建物外壁内部に隠蔽し、建物の外観を縦横に走る配管が建物外観の美観を損なわないように気を使うことも建物の印象を整える所作と言えます。 その他の設備配管類や換気ダクトの取り付け位置にも気を配ること、動物病院に必須の酸素ボンベ位置や給湯器の取り付け位置も、人目を忍んだ場所にそっと置いてあげたいと思っています。設備機器は人目につかない場所にあっても、日夜働き十二分に能力を発揮してくれるものです。 |
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| 動物病院併用住宅 クライアント視線から 見えない位置に 空調室外機を配する |
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動物病院に住む（17）ー建物が目印ー | 2013年4月1日 | |
| 動物病院併用住宅の場合、建物自体が動物病院として目印（ランドマーク）になるような建物になることが望ましいと考えています。独立看板や建物外壁に取り付けるサインも地域の多くの人に動物病院として認識してもらうためにはあったほうが良いと思いますが、何より、動物病院併用住宅の建築が人々の心の中に残像として記憶されるような建物になり、ランドマークとなれば嬉しいと動物病院併用住宅を設計する一人の設計士として望んでいます。 建物が目印になると雖も、奇抜な形態やド派手な色彩で建物を目立たせるという手法ではありません。建物が端正というのは、少し言葉の使い方が誤っていると感じますが、なんとなく、そのような感覚の中で、美しさやシンプルな力強さ、待合や受付内部の様子や動物病院内で働くスタッフの仕草が外部に上品に露出するような建物を提案したいと思います。 限られた建築予算と敷地形状や土地面積の大小、地域ごとの建築基準法制限の中で、可能な限り獣医師の先生方の希望と要望に近づき実現できる動物病院と、家族が日常を過ごすための快適な住居を併設することが動物病院併用住宅の大きな目標の一つです。 |
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| 動物病院併用住宅 道路側外観の夕景 |
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動物病院に住む（16）ー概算費用2ー | 2013年3月30日 | |
| 戸建動物病院や動物病院併用住宅の施工費用に関してもう少しお話します。動物病院関連の建物を200棟以上作ってきましたが戸建動物病院の坪単価には幅があります。当然のことですが建物への要望によってコストは増減し、建築場所や施工業者間の競争、建築時期や建築時期の物価等も建築コストの増減に関係します。一般的に、延床面積の大きな建物の場合は坪単価が縮減する傾向になり延床面積の小さな建物では坪単価が増加します。坪単価の実績として、戸建動物病院の坪単価は50万円/坪〜100万円/坪まで幅広く分布しています。最も竣工数の多い価格帯は60万円/坪〜75万円/坪近辺の戸建動物病院（木造の場合）です。 建物構造の選択によっても建築費用は異なります。鉄骨造建築は木造建築費用の2割増し程度、ＲＣ造（鉄筋コンクリート構造）建築は木造の3〜4割増し程度の費用がかかると想定しておけば建築費用の概要がつかめます。 |
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| 動物病院併用住宅 2階住宅のﾘﾋﾞﾝｸﾞﾀﾞｲﾆﾝｸﾞ |
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動物病院に住む（15）ー概算費用１ー | 2013年3月27日 | |
| 延床面積45坪、1階動物病院25坪と2階住宅20坪で最低限機能する動物病院と日常生活を過ごす住居ができます。（もちろん個人差がありますのでもっと小さな面積でも可能ですし、45坪では動物病院も住居も物足りないという方も居ることと思いますが、話の進捗上45坪動物病院＋住居で話しを進めさせていただきます。） 45坪の動物病院＋住宅の建築費用がどの程度になるものか知りたい方も多いことと思います。建物の構造様式によって建築費用は異なりますので今回は木造2階建ての動物病院＋住宅で考えていきます。最低限の機能を満たして動物病院を作るための施工費用には60万円／坪程度の費用は用意しておいたほうが無難と考えます。すなわち25坪×60万円＝1500万円が動物病院をつくるために必要であろう費用です。住宅の施工費用については、住宅の仕上げ材料、住宅設備機器仕様、要望事項により変動が大きく単純な坪単価計算はあまり意味を成さないのですが、贅沢をしないことを約束していただけると仮定して60万円／坪程度あれば何とかできる可能性はあります。すなわち20坪×60万円＝1200万円が贅沢抜きの住宅を作るための必要費用です。これらの費用には冷暖房機器費用及び取り付け費用は含まれておらず、設計監理費用や消費税も含まれていません。加えて外構費用や植栽費用も含んでいませんのでそれらをざっくりまとめると3500万円程度の費用は最低限用意しなければならない建築全体費用と想定されます。 45坪の動物病院＋住宅の最低建築費用は3500万円以上程度、この金額が高いと思われるか安いと思われるかは人それぞれですが、動物病院＋住宅をつくり続けている設計事務所の経験から判断すると、この金額を下回る建築費用では満足できる建築は手に入れられない可能性が高いと感じている次第です。 |
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| 動物病院併用住宅 1階動物病院24坪の平面図 |
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動物病院に住む（14）ー延床面積と部屋数ー | 2013年3月24日 | |
| 動物病院は25坪程度の床面積が確保できればある程度機能する動物病院のプランが可能です。必要諸室の広さの要望や待合ラウンジの待合人数、入院室のケージ数等、各々の動物病院によって個人差はありますがおおよそ下記に記す諸室の確保は25坪程度あれば可能です。 25坪動物病院：風除室・待合ラウンジ・受付・客用WC・診察室2室・フード庫・薬局・検査処置室・入院室2室・隔離室・スタッフ用WC・OPE/Ｘ線室・スタッフ室 住宅は家族構成や年齢の違いによって必要諸室は変わりますが20坪程度の延床面積があれば日常の生活に支障の無いスペースの確保が可能です。20坪の住宅の部屋構成を以下に記します。 20坪住宅：玄関・浴室・洗面所・WC・リビングダイニング・キッチン・主寝室＋ＷＩＣ・部屋＋ＷＩＣ・納戸 註 ＷＩＣ：ウォーク・イン・クローゼット 1階と2階を合わせた延床面積が45〜50坪程度あれば、動物病院併用住宅の最低限の必要諸室が確保でき、動物病院の運営と日々の生活を送る動物病院併用住宅ができます。 |
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| 動物病院併用住宅 1階動物病院24坪の立面図 |
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動物病院ファサード（13）ー個性的なデザイン 3ー | 2013年3月23日 | |
| 結論や着地点が見えない状態で文章を書き始め、書き進めていく行為は不安と快感の隙間を暗中模索して前進するような感覚で、例えれば、歩きを覚えたての子供が歩くのは楽しく嬉しい行為なのだが、歩いている自分自身が何処に向かっているのかは、本人にもわからないような状況に似ているような気がします。建築設計を、殊に基本構想案の平面図を思考している場合の状況もそのような状況に良く似ています。平面図の最終形も建物の形態もどのようになるのかは良くわからないけれども、なんとなく進んでいる方向は良い方向のような感じがする、将来楽しい幹事になるような気持ちがするという感触です。脳で思考している感覚ではなく勘で肌触りのよさそうな面白そうな展開になる感覚を掴もうとする状態です。 建築形態やデザインに当たりもはずれも無いとは思いますが、人を魅惑したり驚かせたり立ち止まらせることはできると考えています。頭の片隅に無意識のうちに刻み込まれるような動物病院併用住宅ができればいいなと常日頃から思っています。 |
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| 動物病院併用住宅 エントランスから建物を見る |
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動物病院ファサード（12）ー個性的なデザイン 2ー | 2013年3月21日 | |
| 平面計画の試行錯誤の後、平面図が形になってくるのですが、平面図が形になりつつあるまさにその段階で、建物の断面計画と立面が見えてきます。建築は一体の構造を有して初めて構築物として成立するので平面図と断面図、立面図は同一の建物を表現しているものですので平面図を変更すると断面図と立面図は連動し変更され、断面図や立面図を変更すると平面図も変更になります。この作業を繰り返して建物としての機能性やデザインを詰めていく作業を行うことが基本設計です。したがって建物の機能とデザインは切り離せない関係にあり、優れた平面図には魅力ある立面図が漏れなくではありませんが、付いてくることが多いと言えます。 建築の場合、建物の形態やデザインに関わる要素はすべて平面図や断面図と連動しており、平面図や断面図を吟味していくことによって建物への考え方や嗜好が立面図に現れる仕組みになっています。動物病院の場合、先生方が拘る待合ラウンジと受付の配置や構成、クライアントゾーンの位置関係、ワークゾーンの機能性が自ずと立面図に反映され建物外観のデザインとして表出するようになっています。したがって、デザインや装飾に特に固執しなくとも、個性的な建物デザインが出来る素養は基本計画の作業の中に潜んでいることになります。 気楽に言わせていただければ、生活感を忌避し、個人的な嗜好を均質化した上で、建築外観及びデザインが秀でたものになることは“簡単な事ではありませんが、不可能なことではありません。”ということと思っています。 |
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| 動物病院併用住宅 道路側外観 |
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動物病院ファサード（11）ー個性的なデザイン １ー | 2013年3月20日 | |
| 何ゆえに生活感を忌避しなければならないかは前項で検討しております。生活感を忌避し、個人的な嗜好を均質化した上での建築外観及びデザインが月並みな建物になるのではなかろうかという疑問に明るい道筋をつけなければならないのが、今項です。 建物を計画する時あるいは現在進行形で計画している間に、建物は何処からともなく形になり実体を伴い始め、平面の上での計画が立体として姿を見せ始めるのですが、平面図が見えてこなければ立体としての建物は表れません。平面図が存在しない建築の立体あるいは建造物は私の場合ありません。基本は平面図です。平面図があって初めて建物としての立体が存在し始めます。平面図は土地調査のため現場に赴き土地調査とヒアリングをしている時におぼろげに脳裏に浮かんでくることもありますが、ほとんどの場合、ヒアリングや調査後、事務所に戻り計画敷地の敷地図を図面化し、調査時の土地の写真や資料を整理しヒアリング内容を読み返すうちに徐々に（時にはまったく平面図が降りてこない場合も多々あるのですが・・・）平面図の骨格の基になる枠組みが浮かび始めてきます。 土地の形や道路付き、道路方角や近隣の状況、土地からの眺望や計画土地へのアクセス方法をあれこれと思い、ヒアリング要望とヒアリング時の印象がバラバラに入っている箱の中をガラガラと掻き回しながら当たりはどれ？と思いながら、平面構成の方向が見つかる手掛りを探し続ける行為が平面図の計画です。 |
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| 動物病院併用住宅 道路側外観 |
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生活感の隠蔽（10）ー生活感の忌避ー | 2013年3月19日 | |
| 治療にせよ予防にせよ健康を取り戻すあるいは健康を維持する目的で訪れる場所が動物病院です。動物病院を利用するお客様が動物病院に求めているものは自分と共に暮らすペット達の治癒と健康増進です。動物病院を訪れることによって健康を害したり気分が落ち込んだり気持ちのハリが無くなる場所を好んで選ぶお客様はいないと考えて間違いないと思います。動物病院に来るだけで気分がハイになることや明るい気持ちになること、訪れる以前より以後で気持ちが前向きになることができるような場所づくりをすることが動物病院のクライアントゾーンが目指すデザインの目的といえます。 動物病院を訪れる不特定のお客様すべてに対して“あなたが選んだ動物病院はあなたとあなたの大切なペットのための動物病院です“とのメッセージを伝えるためには、動物病院という場に特定の個人の生活感が入りこむことは極力避けなければならないと感じます。 特定の個人に好まれる動物病院はその個人以外のその他の人々を除外することになると感じているからです。誰かを特別扱いにすると、その他の人達は疎外感を感じることになります。特定の個人の中には動物病院の上階で生活する獣医師の先生方も含まれると考えます。故に、個人の生活臭や生活感を動物病院に持ち込まないよう、生活感が建物外部やファサードに表出しないような計画が必要になってくると考えています。 公共性を維持することは個人の嗜好を均質化しながら、多数に好まれる要素を構築する作業です。しかし嗜好を均質化することは建物の均質化につながり平均的で平凡でありふれたデザインの建物に成りかねない危惧も併せ持っています。言っていることが袋小路に入りつつあるようですが、ここでは生活感を忌避しなければならない理由を検討しているので、建築外観及びデザインの均質化への危惧に関しては次項以降にて検討したいと思います。 |
 動物病院併用住宅ＬＤと中庭、キャットウォーク |
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 動物病院併用住宅ＬＤとオープンキッチン |
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生活感の隠蔽（9）ー魅力あるファサードー | 2013年3月18日 | |
| 動物病院単体の建物でも動物病院併用住宅でも建物は動物病院として魅力あるファサードを持つべきと考えています。動物病院として魅力あるファサードとは何ですか？と問われると普遍的な回答はありませんとお答えするしかないのですが、魅力あるファサードを持った動物病院は存在します。建物の外観及びファサードデザインは建築を作る際のコンセプトに関わってくる根源的なものです。 おぼろげに心に浮かんでは消える動物病院の外観イメージを持っている獣医師の先生もおられますし、抽象的な言葉で建物への思いを語られる先生もおられます。幼い頃の心象風景や旅に出かけた際の特定の地域の印象を話される先生もおられます。設計者はそれらの抽象概念を自身の内部に飲み込んで換骨奪胎し、消化し、還元し、酸化し、二次元化し図面化し、平面図や断面図、立面図としてはき出したものが基本構想案の図面提案となります。 基本構想案が獣医師の先生方の心の琴線を少しでも揺らせば、糸口が見つかり、小さく細い糸口をゆっくりとしかも確かに手繰り寄せていくことによって、魅力あるファサードや建物外観が前景化してくるのです。 動物病院併用住宅でも動物病院を利用するお客様に、住宅としての居住スペースがあるとはまったく感じさせること無い建物外観やファサードをつくっていくことは十二分に可能なことであると考えています。 |
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| 動物病院併用住宅 ファサード夕景 | ||
併用住居の玄関（8）ー内で繋ぐ外で繋ぐー | 2013年3月15日 | |
| 内部階段で１階と2階を繋ぐ場合は階段の面積が建物の延床面積に含まれます。内部階段を作るために必要な面積は最低でも2坪程度ですので、戸建建物の坪単価を60〜70万円と想定すると内部階段を作るためには120〜140万円程度を費やします。外階段は主に鉄骨で作成する階段です。概ね1階から2階への鉄骨階段の制作・設置費用は50〜60万円程度です。内部階段と外部階段では想像以上に大きな費用差が出てくるものです。コストで内部階段と外階段を比較すると“外で繋ぐとコストは下がる”のです。 内で繋ぐ場合は1階に住宅の出入口を設けます。1階住宅の入口ドアを開くと玄関があり、玄関で靴を脱いで2階に上がり、2階に上がりきった場所に住宅に入るドアがあるのが一般的な計画です。動物病院と住宅は1階玄関にて繋がっており、住宅の玄関から動物病院に入室できるドアを設けます。この玄関と職員出入口を共用する場合もありますが、動物病院と住宅が玄関で混在する状況は双方の機能上望むべく方向ではないので、職員出入口は住宅玄関と共用することは避け、職員出入口は別途、他の場所に設けることになります。 1階動物病院の平面計画に内部階段位置は大きな影響を及ぼしますし、加えて2階住宅の平面計画は階段位置に大きく左右されます。内部階段を選択する場合は、動物病院と住宅の平面計画と階段位置の検討に時間を要します。 動物病院と住宅を緊密な状況に保つ場合には内で繋ぐ選択が上位になり、動物病院と住宅を切り離して考えると外で繋ぐ選択が優位になることもあるでしょう。内で繋ぐ・外で繋ぐは獣医師の先生方の考え方次第です。 |
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| 動物病院併用住宅 洗面室とWC | ||
併用住居の玄関（7）ー内で繋ぐ外で繋ぐー | 2013年3月14日 | |
| 住宅の玄関位置も動物病院に住むために考えておかなくてはならないことです。動物病院の主出入口は敷地が接する道路側や駐車場からアプローチしやすい1階に設けますが、職員出入口と住宅への出入口をどのように配するかによって戸建建物の必要面積や平面計画は影響を受けます。 1階動物病院、2階住宅の建物の場合、1階には動物病院の主出入口と職員出入口を設け、2階に住宅出入口すなわち玄関を設けるのが個人的な好みではあります。移動距離は短くとも、外気に触れ外気を吸い込んで今日の天候を自分の目で確認しながら、私的な空間（住居）から職場（動物病院）へと向かう際の気持ちの切り替えができればいいな・・・といった個人的な趣向です。具体的には、朝、“行ってきま〜す”と2階玄関ドアを開き、玄関外で今日の空を仰ぎ見て肌で気温を感じ、外階段を下りながら、“今日は昨日よりは暖かくなっているな”とポケットの中の動物病院出入口の鍵を手探りし、動物病院のドアを開けながら、今日も一日お客様が来てくれる事を願う・・・程度の距離と時間があれば嬉しいと思っています。 上記はあくまで個人的な趣向です。動物病院と住居を繋ぐ方法は内で繋ぐ・外で繋ぐの2種類です。外で繋ぐのが上述した外階段で1階と2階を繋ぐ方法、1階と2階を内部階段で結ぶ方法を内で繋ぐと表現しています。 |
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| 動物病院併用住宅 外階段 | ||
動物病院+住宅（6）ー上下の関係ー | 2013年3月13日 | |
| クライアントゾーン上部、特に待合ラウンジや受付上部に2階居室を配しないように計画することも木造建物の場合は考えておいたほうが良いでしょう。木造建物の場合は2階の生活音が階下に伝わる可能性が他の構造の建物よりも高くなります。階下に音が伝わらぬように床下に防音材を敷き込む方法もありますが、小さな子供が跳んだり跳ねたりする衝撃音は確実に階下に伝わります。待合室上部を吹抜けにすることや待合室上部には納戸や客室を配する等、平面計画の一工夫で階上からの生活音を抑え階下のクライアントゾーンの音環境を良好に保つことが出来ます。 2階トイレや洗面所の排水も生活音のひとつで排水時に排水管を流れる水音が以外に出ますので、トイレや洗面、キッチンの排水経路と位置にも注意が必要です。待合ラウンジ上部や診察室上部には住宅の水廻り諸室やキッチンを配することも避けたほうが良いと思います。平面計画上、どうしても待合や診察室上部に水廻りを配さなければならない場合は、排水管にグラスウール等を巻き込んで排水管内部の音を消音する等の施工も効果があります。 |
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| 上部吹き抜けの待合ラウンジ | ||
動物病院+住宅（5）ーデッキの配置ー | 2013年3月12日 | |
| 計画敷地に接する前面道路が敷地南側の場合、動物病院のファサード側に2階住宅のリビングダイニングが配される計画になりがちです。2階部分の日常生活が日々街路側に露出し、洗濯物干しの洗濯物が道路側より見える状況は動物病院にとって好ましい状態ではありません。2階道路側に奥深いデッキを設けることによって街路からリビングダイニングまでのの奥行きを確保することや2階デッキの素材を連子状に組んでリビングダイニングに光と風を通しながら視界を断ち切る工法を採用することや2階部分を1階部分よりセットバックして街路から2階部分を見えないようにする工夫が必要です。デッキ壁を1.5ｍ以上立ち上げて道路からの視線を遮断する方法も考えられます。2階住宅の窓の位置や窓の切り方の工夫によっても、生活感の露出を抑えることが可能です。 住宅には洗濯物を外干しするデッキも必要になります。下着やシャツといった生活感溢れる洗濯物が動物病院の2階で揺らめく姿が動物病院の駐車場やアプローチからお客様に見られるのも控えたいことです。洗濯物干しデッキを2階中庭に作ることや風通しのよい素材でデッキを囲うこと等、デッキの配置には緻密な検討が必要です。 |
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| 2階に取り付けた連子格子デッキ | ||
動物病院+住宅（4）ー方角と道路付きー | 2013年3月11日 | |
| 動物病院と住宅は機能的には無関係な建物です。動物病院階上に住宅がある必然性はありませんし、住宅の階下に動物病院がある必要もありません。 敷地に余裕があるならば、道路からのアクセスの良い場所に動物病院を配置し、敷地奥の裏手に住宅を配置することも可能ですが、自家用駐車場と来客用駐車場台数を考慮に入れると2棟を同一敷地に配するためには、最低でも300坪程度の敷地面積が必要と思います。しかしながら都市近郊にの300坪の敷地を手に入れることは容易なことではないと思われますので、今回の考察では同一敷地に動物病院と住宅を別棟として建てることは除外します。 動物病院の場合方角（太陽の向き）によって諸室の位置を決定しなければならないことはありません。待合ラウンジが南側を向いていても北側を向いていても平面計画に大きな問題は出てきません。西日が強烈に差し込む待合ラウンジの場合は窓の取り方や寸法、空調機器の能力等々、熟慮が必要になる場合もあります。動物病院の場合は太陽の位置や方角よりは敷地前面道路の位置と駐車場位置が動物病院の配置計画や平面計画に大きな影響を与えます。動物病院を利用するお客様に入りやすい動物病院を目指すためには道路から目視できる位置に駐車場を置き、駐車場や道路から入りやすい位置に出入口を配します。道路を歩く人や駐車場から待合ラウンジや受付の様子が垣間見られれば、さらに入りやすい動物病院に近づいていきます。また、敷地前面道路の歩道の有無、歩道植栽や高木の有無、敷地から交差点や信号機までの距離も建物配置に影響を及ぼします。 一方住宅の場合、方角は平面計画を決める上では考慮しなければならない重大な事象です。リビングやダイニングには南からの日差しが入ることが望ましいでしょうし、洗濯物を干すデッキに一日中陽が当たらないようでは、物干しデッキの意味がありません。 道路位置と東西南北の条件は、“動物病院に住む”ための計画初期段階から動物病院と住宅を満足すべく作っていく道程に黄信号を灯す要因になります。方角と前面道路位置は動物病院併用住宅を計画する上で熟考を要することがらです。 |
動物病院に住む2階住宅 ＬＤＫ |
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 動物病院に住む 2階住宅 ＬＤＫとタタミ室 |
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動物病院に住む（3） | 2013年2月18日 | |
| 動物病院に住むということは、動物病院が主体で住宅は動物病院に付属するもの、あるいは従属するものであることと念頭に置きながら論を進めて行きたいと思います。ただし、住宅が動物病院に従属するものと考えて行くことによって住宅の生活環境や機能性が劣ってしまうことがないよう、住環境も満足でき、動物病院環境も機能する空間を志向して行きます。 一般的に動物病院は、求められる機能がある程度決まっていますので、必要諸室についてもほとんどの動物病院でそれほど大きく変わるものではありません。動物病院規模の大小や目標とする医療行為によって必要諸室の数に多寡があることやＣＴ室やＭＲＩ室などの部屋が必要になる等の違いがでる程度です。 動物病院はお客様にとってクライアントゾーンが利用しやすく、ワークゾーンでの診療動線も明快にすることで医療サービスの充実や医療環境の維持向上に努めなければなりません。戸建建物の場合、お客様にとって2階よりも1階の方が入りやすいことは自明のことです。常識的に考えても2階建ての建物であれば1階が動物病院、2階住居でしょうし、それ以上の階数の建物の場合は1階動物病院と上階が住居あるいは1・2階が動物病院でそれ以上の階が住居となります。 |
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動物病院に住む 2階住宅洗面所 |
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動物病院に住む（2） | 2013年2月16日 | |
| 戸建動物病院の場合、建物本体が動物病院の印象を決める大事な要素になりますので、住宅を併用する場合は生活感や日常生活は極力外部露出しないように心がけたいところです。そうは言っても仕事から解放された自宅で常に緊張感を持続しながら家庭生活を続けることや、洗濯や掃除、ゴミだしや入浴等を気を使いながら行うこともストレスを身体中に溜め込むことになり、日常生活だけではなく、動物病院の業務も辛くなってしまいます。 自宅での生活はスイッチをオフにして心ゆくまでゆったりと寛いで過ごし、動物病院の業務はスイッチをオンにして前向きに明るくやっていくことが理想です。 動物病院から住居への短い移動でスイッチのオン・オフ切り替えが出来、日常生活と診療業務がスムーズに行える動物病院の建築計画、これが“動物病院に住みながら”日常生活も楽しむ事の基本となります。理想に近づくための動物病院併用住宅をつくるにはどのような所作が必要条件として挙げられるのか、今後数項目に渡って検討していきます。 |
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動物病院に住む 2階住宅玄関 |
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動物病院に住む（１） | 2013年2月14日 | |
| 動物病院は不特定の人が訪れる商業建築であり、公共的な要素を兼ね備えています。住宅は建物の類別としては個人的な建築物で、日々生活する場所です。多くの人を招く動物病院とプライベート空間である住居は機能も目的も異なる建築です。 動物病院は不特定多数の方が安心して寛げ、落ち着いて診療機会を待つことができるようなクライアントゾーンが設えられていることが望ましいことでしょう。安心・寛ぎ・癒し等を感じる空間は個人差があり、一概に規定はできませんが、少なくとも整理が行き届き、清潔で、きれいに片付いていることは概ね、多数の人からの賛同を得られるのではないでしょうか。デザインは個性を表現し、各々の動物病院がクライアントに伝えたいコンセプトを表すものですので、好き嫌いの範疇に区分されることです。しかし乱雑で、埃が舞い、不潔な動物病院を好んで選ぶクライアントは数少ないと思いますので、最低限、動物病院としての建築的な機能は、整理しやすい、掃除しやすい、メンテナンスが容易で、汚れの目立たない汚れのつきにくい材料選択が必要ということになります。加えて、動物病院に住む場合には、動物病院内に日々の生活感が露出しない作りとする、建物外部にも生活臭が滲み出ないように配慮された建築計画である必要があるでしょう。 |
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動物病院に住む 2階住宅の客室とロフト |
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戸建動物病院併用住宅 | 2013年2月8日 | |
| 動物病院と住宅の立地には適度な距離があるほうが仕事をしやすいと考えています。徒歩圏内で15分以内に住宅と動物病院が立地する様な距離感が健康のためにも気分転換にも仕事の効率を考えても(個人的には)良いのではなかろうかと想像しています。しかしながら日本の土地は高額で、開業したい場所に想定通りの適当な敷地が見つかる期待は薄く、さらに動物病院の近場に住宅用の土地が同時に見つかるなど、一生の運気を使い果たしてしまうような強運の持ち主はめったにいないものです。もしも、そのような土地が見つかったとしても、建物を同時期に2棟建てることは経済的に大きな負担となります。選択肢として動物病院併用住宅をつくることが想起してくることは、妥当な考えと想定できます。 動物病院と住宅は使われ方も違いますし使い方も違います。まったく異なる機能を有する建築を同じ場所に作っていくことになりますので、使用後のトラブルを少なくするためにも、事前にトラブルの芽を摘み取っておかなければなりません。 動物病院併用住宅として住宅を主眼に置く立場から建築を考えていくと既存の動物病院併用住宅の枠から抜け出すことが困難になり、動物病院の自由度が貧弱になる方向に視線が動いていきますので、今回は動物病院を主体として、“動物病院に住む”という視点から動物病院と住宅の共生について考えてみたい思っております。 |
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動物病院に住む 2階住宅のキッチン廻り |
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| 掲載写真は動物病院設計ＡＣプランで設計監理した動物病院の写真です。 | ||
